掲載日:2025年7月26日(土)
講座の記録
講座名 | : | なぜ私たちは差別を繰り返すのだろう ~在日朝鮮人の歩みから、日本と朝鮮の歴史を考える~ | |
講 師 | : | 金 耿昊(きむ・きょんほ)さん | |
開催日 | : | 2025年7月12日(土) |

大人の学校では、これまで季刊『社会運動』を参考に、講師を招いた学習会を不定期に開催してきました。今回は、『社会運動456号―社会的経済に向かう韓国市民運動』の中で、「菊田一雄の生涯と生協運動」のページを執筆されたキム・キョンホさんを講師に招き、お話を伺いました。
日韓の関係史から、関東大震災時の朝鮮人虐殺と日本社会、差別と苦難の時代を生きた3人の在日朝鮮人の生涯、そして在日朝鮮人とはどんな存在か等、大変内容の濃い講義で、日韓の歴史をはじめ、現在の日本社会の中で在日朝鮮人の人たちが置かれている状況が非常に複雑になっていることなど、ほとんど何も知らないことを痛感させられました。
キムさんは、6年前の正月に、隣家の住人が突然「テンノウヘイカ、バンザーイ」「ダイニホンテイコク、バンザーイ」「チョウセンジン、ブッコロース」と絶叫したという経験を話してくださいました。キムさんが自分が在日朝鮮人3世であることを告げると、隣人は「しずかに暮している在日までどうこうしようとは思っていない」と釈明したそうです。それ以来キムさんは「しずかに暮らす」とはどういうことなのかを意識するようになり、その中で、その境界線はかなり曖昧であり、その判断がマジョリティーである日本人に握られている事実に改めて気づかされたといいます。
「しずかに暮らしている在日」と「しずかに暮らしている日本人」は地続きに感じます。おとなしく静かに暮らしているかどうかを、私たちが気にしながら暮らさなくてはいけない社会が、近くまで来ているとしたら…。「日本人ファースト」などと声高に叫ぶ政党が人気を集めるような状況の中、キムさんの以下の言葉をより多くの方たちと共有し、現実に向き合っていけたらと思います。
「排外主義の極端な主張にあおられて乗っかるのではなく、とんでもない暴言に驚いて硬直してしまうわけでもないたたずまいが求められている。信頼できる情報を求め、丹念に粘り強く考え、また行動することが私にも、私たちにも必要かもしれない」
敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授。1984年、神奈川県生まれの在日朝鮮人三世。博士(学術)。専攻は在日朝鮮人史、日本近現代史。 著書に、『積み重なる差別と貧困 在日朝鮮人と生活保護』(法政大学出版局、2022年)など。最近の悩みは、2年前から新潟県新発田市に住み始め、ご飯がおいしすぎてつい食べ過ぎてしまうこと。それから5歳と3歳の娘の育児。
報告 : AH
( 本講座チラシ PDF 514KB)