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掲載日:掲載日:2020年2月10日

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さいたま寺子屋サロンの記録

お 題:私のがん体験
~ 2度の手術を経て考えたこと ~
話し手:久保田 敏 さん (1937年生まれ、所沢市在住)
開催日:2019年11月30日
会 場:生活クラブ本部談話室
久保田敏さん
久保田 敏 さん

がんは身近な病気となり、二人にひとりはがんを体験する時代ともいわれています。誰もが自分(家族)のこととして心の準備をすることも大切ではないでしょうか?
今回は久保田さんのがん闘病体験についてお話を伺いました。

これまでの病気の経過

はじめに、これまでの病気の経過についてお話がありました。

  • 2017年の暮れに前兆(便の乱れ、色の変化)があり⇒地元の医院を受診
  • 総合病院への紹介状をもらい多摩北部医療センターを受診⇒帰宅後に気を失い救急搬送
  • 重度の貧血で即入院~「進行性胃がん」の診断(2018年3月)~同月に第1回胃がん手術~入院生活⇒退院~在宅抗がん剤治療(3か月間)

そして、7月末に前回の手術で取り切れなかった患部を切除する2回目の胃がん手術を受け8月上旬に退院、術後から現在まで『術後予備化学療法』を行っていることなどが語られました。

絶望を救ってくれた1通のメール

1回目の手術の麻酔が覚めたとき、主治医から「 病巣が大きくて取りきれなかった… 」と聞かされ、それまで一回の手術で済むものと単純に考えていた久保田さんは「 俺はいったいどうなるんだ 」と絶望の淵に立たされ、自分の将来を見失いかけました。そんなとき、友人からの1通のメールに救われます。そのメールには、「大きく深呼吸して、いつもの久保田さんらしさを取りもどして…」とありました。

そこで我にかえった久保田さんは、それまでの自分が過ごしてきた人生を振り返り、節目々々で自分を支えてくれた人々との出会いを思い起こしてまとめてみたことが、これまでの自分の人生が間違っていなかったという確信を生み、4つの信条になリました。

  1. 肩書のない名刺
  2. 今の社会、必ず自分の反対者がいる
  3. 理想を持たない現実主義は、現状肯定にしかなり得ない(理想を大切にする)
  4. 「人間本来無一文」「人を信じて他人(人)に頼らず」

そうすることで久保田さんは、これまで多くの人に支えられて生きてきたことに今更ながら気が付き、言い知れぬ満足感に満たされました。いつもの自分らしさを取り戻した久保田さんは、過去の職場の会報や友人、地域の市民生活の仲間たちへ向けて自分のがん体験の様子を積極的に発言したり近況挨拶として暑中見舞いや彼岸の折に病状を知らせるハガキを出したりするようになりました。

闘病を乗り切ったポイント

久保田さんは、闘病を乗り切ったポイントを2つ挙げています。

  • 病気のことを積極艇に発信したこと
  • 人と人のつながりを途切れさせなかったこと

そして最後に、

  • 自分の病気についてよく知り、自分の体は自分で管理することが大切であること
  • 本来の自分を取り戻すこと(自分の心の整理ができたこと)が病気を乗り越えるきっかけになった
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と締めくくられました。

参加者からは、「抗がん治療について」「家族の反応はどうでしたか」「久保田さんの持つ『理想』とはなんですか?」「セカンドオピニオンは求めなかったのか」等々活発な質問が寄せられ、がん闘病に関する関心の高さが伺えました。

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サロン終了後の久保田さんとのやり取りの中で、「費用の問題」について話すことができなかったので、と以下のようにメールをいただきました。

費用の問題の質問がありました。みなさん心配なさる問題です。
私の場合は、もう20年近く前のことになりますが、定年後に入院保険に入っていました。当時は特別理由があったわけでもなく、何かあって入院することがあれば、その足しに…くらいの認識でした。最初の胃がんの手術が済んだ後、保険会社に連絡を取ったところ、がんの種類と手術の程度により給付金が出る、との回答でした。私にその知識はありませんでしたが、考えてみれば20年近い社会の変化は、保険業界へも応分の競争原理が働いた結果なのかな、と理解しています。

一方、現在の社会保障制度の中に、高額医療費の自己負担の上限という規定もあり、また、後期高齢者保健の事業団からも給付金もあったりして、結果的には保健からの給付金で充分間に合いました。確定申告では特別の申請はしませんでした。

私の場合は、いわゆる "がんの標準治療 " で、医療保険の範囲ですんだというケースだったので、こうした結果ですが、現在の社会保障制度のもとでは、各種保険制度をうまく活用すれば相当の対応力はできるのではないか、と推測しています。

そのほか、少し注意が必要かな?と感じているのは、世間に拡がっている「 現在は二分の一の人ががんになる 」というセリフです。私の現役時代は「 三分の一はがんになる 」と言われていました。その論拠は、分析によれば、がんの原因要素の三分の一は食生活を中心にした生活環境にある、という研究でした。自身の健康を大事にするのは大切な心構えですが、私は、冒頭のセリフは、半分マユツバもの、の認識で受けとめています。

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報告は以上です。久保田さん、参加のみなさん、ありがとうございました!

スタッフ
報告書作成:いーはとーぶ(話し手の久保田さんより加筆修正などいただきました)
HTML制作:山野井美代