掲載日:2024年8月9日
講座の記録
講座名 | : | 生活クラブカッレジ2024 【全6回】 ハイブリット講演会(オンライン & 会場) 第1回 みず(水)から考える持続可能な社会 | |
講師 | : | 橋本 淳司 さん(水ジャーナリスト) | |
開催日 | : | 2024年7月5日 (金) |
「水みんフラ」という、水に関する色々な事が一つの絵の中に入っているスライドを見ながら話は始まった。今までインフラというと構造物、水道管・下水管・ダムなどをインフラと考えていたが、例えば森林が伐採されて大水が出てしまうとか、農地が少なくなって田んぼが減って生き物が住める場所がなくなってしまうことも、我々にとって重要インフラではないか、という考え方をお話しされた。
歴史的に人間を見ると、水の流れを変えるサルであるという話や、毎日使っているスマホやパソコンのグーグルやマイクロソフトなどのデーターセンターのサーバーを冷却するために膨大な水を消費しているという、初めて聞く話もあった。
また、流域といわれる所に我々の生活はあり、水問題を考える上でこの流域は基本的な単位。流域で水の循環を考えていくと水を利用する利水と治水があるが、どういう風に水が集まって来るか考えることがとても大事だ。埼玉南部や東京は降った雨はほとんど利用されず、利根大堰から取水される水が多い、とのこと。
日本は水に恵まれた国というのは錯覚。年間降水量は陸地世界平均の2倍だが、人口密度が高く急峻な地形ですぐに海に流れてしまい一人当たり世界平均の約半分。それでも水の恵みが得られて水の災いが少ないのは色々な装置が周りにできているから。例えば森林。森林に降った雨はそこがふかふかだと染み込んでとどまり地下水として使える。森林が水インフラの役目を果してくれている。そして水田もお米を作るだけでなく水をためる役割を果たしている。浸透した水は地下水として使える。この「水みんフラ」のおかげで我々の水利用、食糧生産が可能になっている。
しかし現在、水道管の老朽化、地震や水害の影響、水道事業者の減少などで「水みんフラ」に危機が忍び寄っている。水道の持続性を考える時に、やり方は色々あり新しい技術がいっぱいある。重要なのは、自治体のマネジメントの問題。
流域の水とともに物質の循環がある。良くない物質として、有機フッ素化合物PFASは、5.000種類ぐらいあり、代表的なPFOSやPFOが水道水の水源からも出てくるようになった。10PFOSが我々の生活の中にやってくると考えると、水道水は1、食品が7、それ以外の風で飛んできて吸ってしまうなどが2。そう考えると、全体として見ていくことの方が大事なのではないか。また日本では2010年にPFOSが、2020年にPFOAが製造・使用を禁止されたそうで、今後も関心を持って注視してゆきたいと思った。
日本に一番食べ物を輸出しているアメリカ、ブラジル、オーストラリアも気候変動の影響で作るのは難しくなっている。日本の水を使って、食べ物を自国で賄うという流れが普通にやってくる。我々はとにかく流域の水を上手に使って田んぼ、畑をいかに維持していくかということが、今すぐやらなくてはいけないこと。
8月1日は「水の日」。水をゆっくり流す場所を作ってゆくことも大事なこと。我々は街をコンクリートで固めてしまい川も三面コンクリートで囲われて、水がどんどん流れてしまう装置になっている。明治以降早く流して街を守ろうという発想で作ってきたが、それだけでは生き物にも優しくないし、降った雨は収まるどころか最近は溢れている。水田、森林、雨庭(公園などを掘って石を入れ一時的に水をためる場所)などを街の中で備えることで、水を保全する活動に繋がっていく。
すぐできることとして、お米を食べると水と生活が守れる。近くのお米を食べることは近くの田んぼが維持されることに繋がり、水田の6つの機能(生き物がやって来る所が守られ、地下水を蓄え、洪水を防止させるなど)も維持されプラスの働きがいっぱいある。
また、森も守っている。荒川の上流部の森林が保全されることによって、下流に住む人たちにとっても環境教育の場ができたり、木を使えたり、森林が持っている7つの働き(地球温暖化の防止、土砂災害防止、生物多様性、洪水防止、水を浸透させ水を育む、安らぎの場など)が維持されていく。
「水みんフラ」を流域単位で大事にして、上・下流が連携することで課題を解決することができる。上流で小水力発電をやって売電したり、下流に住んでいる人が上流の農園に手伝いに行ったり、流域内のお米を食べ、木を使って家を作ったりと。
最後に「流域の中の水を考えると社会を良くするアクションが色々あるので、自身がやれるものからやってほしい。またいいアクションだなと思ったら、それはいい取り組みなのだということを発信してほしい」とのこと。まず身近な田んぼに関心を持ち、埼玉のお米を食べることから始めようと思った。
報告 :飯田
( 本講座チラシ )